鴎の忘備録

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 「夢中ビオロン協奏曲」 vol.5


  「夢中ビオロン協奏曲」 vol.5
 
 
 バックが学生オケというのは納得がいく。
弦奏は不揃いだし、管は時々妙な音を出す。
 しかし、独奏がスターンというのは・・・
 
 曲は、ヴィエニアフスキとブルッフが混だくしたような調子で、
照れくさくなるほどロマンチックだった。
 
よく聴くと、しつこいくらいに旋律が重なりあっている。
和音の響きだって、少しばかりわざとらしい。
 
 が、ふっとソリストの旋律に、あのアイザック・スターン
独特の枯れた引きずるようなルバートを感じた。
 
思わず顔を上げると、女性が、にゃっと笑った。
 
そうらごらんなさい、とでもいうように。

 
 
 夢はそこで途切れた。
 
遠くで除雪車の雪をかく音が、地面を這うようにひびいている。
行きつ戻りつ除雪車はさらに遠のいてゆく。
そのリズムに、いつもとは違う心地よさを覚えながら、
ぼんやりと聴いていた。
 
 
 目を覚まし、なんとかしてスターンの弾いていたあの曲の、
ワンフレーズでも思い出そうとしたのだが、駄目だった。

 
 後日、テレビで海にまつわる演歌の特別番組を観た。
 
ガラスの浮き玉を買い忘れていたのに気がついたのは、
その時だった。
 
              seagull.t